なぜいいのか?
を説明できるものたちで人生を飾っても
そこには意味と記号が溢れるだけだった。
撫でたい瓶や、頬ずりしたい桃、
心ゆさぶられる形はみな、
「なんかいい」ものたち。
触角でも生えたみたいな気分で
「なんかいい」小石をさがす。
世間の入り込まない美に出会いに。
それは私自身の感覚に出会う旅。
価値を証明する名前をもたない、
けれどさわりたい形、温度、色、
あやかりたい強さ、やさしさ、巨きさ。
長い長い時間がそこには巡っている。
遠い源までイメージはさかのぼっていく。
いったい世界のぜんまいを巻いたのは誰?
時計を手首に締めて識るものは、時刻。
それはいつも人を小さくする。
悠久の時間の流れそのものを身にまとい、
内なる呼吸と同期できたら。
なんかいい は
霞のかかった「いい」ではなく
はっきりと 内側の深い所にある
「いい」だと思います。
私たちは、なんかいい造形への
最も原初的なときめきを感じて頂けるよう
無名の石のまわりで、
何をデザインし、
何をデザインしないかを見極め
ひとつひとつ形にしていきます。